ノロウイルスは潜伏期間にうつる?症状がなくても要注意!
ノロウイルスは感染力が強いので、家族の中に感染者が出ると、次々と二次感染していくことも少なくありませんが、症状がまだ出ていない潜伏期間にも、他の家族にうつることはあるのでしょうか。
彼氏
親父が今朝から下痢がひどくて、どうやらノロウイルスに感染したみたい!だから、俺、明日からの温泉旅行に一緒に行けなくなったよ。ごめん!
彼女
どうして?あなたがノロウイルスにやられたわけじゃないでしょう?
彼氏
昨夜、親父が風呂入った後に、俺も、風呂入っちゃったからさ。湯船の中でうつったかもしれない
彼女
え?だってお父様は昨夜はまだお元気だったんでしょう?潜伏期間なら、うつらないんじゃないの?
ノロウイルスは家族感染しやすいので、潜伏期間にうつるかどうかで他の家族の行動にも影響が出てくる場合があります。
今回はノロウイルスが潜伏期間にうつる可能性があるのかどうかについて取り上げてみました。
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目次
ノロウイルスは潜伏期間中にうつるの?

ノロウイルスの潜伏期間は、通常、24~48時間といわれています。発症後は、吐き気、嘔吐、下痢、腹痛などの症状が1~3日間続き、その後は自然治癒し、後遺症は残りません。
結論から言うと…
◆ノロウイルスは潜伏期間中にうつる可能性はあります。
ネットでリサーチしても、うつる、うつらないの両方の情報があるので、念のため感染症の公的機関2ヵ所と感染症対策の大手企業1社に、電話で直接問い合わせてみました。
結果は、いずれの回答も「ノロウイルスに関しては潜伏期間に他にうつす感染力はあります」という返答でした。
ただし、潜伏期間に他にうつる可能性としては、発症後と比べると、かなり低くなります。
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ノロウイルスの感染経路は、基本的に経口感染になりますが、気道で感染するインフルエンザと違い、ノロウイルスは小腸の上皮細胞で感染・増殖して糞便中に排泄されるので、インフルエンザのように、くしゃみ・咳・会話のしぶき(飛沫)で感染することはほとんどありません。
たとえば、ノロウイルス発症後に感染者が嘔吐したあとに、くしゃみ・咳をした場合には、口の中に残ってる嘔吐物の飛沫が飛び散る可能性はありますが、ノロウイルス発症前の潜伏期間には、まだ嘔吐の症状が出ていないので、嘔吐物による飛沫感染の可能性はありません。
では、下痢の症状が出ていない潜伏期間には、排便の後に他の人にうつる心配はないのでしょうか?
◆潜伏期間で下痢の症状が出ていなくても…
ノロウイルスは、ノロいどころか短時間で猛スピードで増殖を繰り返します。
つまり、下痢の症状がまだ出ていなくても…
◆潜伏期間中に、既に便からノロウイルスの排出が始まっています。
ノロウイルス(Norovirus)を摂取してから15時間後には、症状出現前でも、感染した人の便の中にノロウイルス(Norovirus)が排出される可能性があります。ノロウイルス(Norovirus)を摂取してから15時間後に便の中にノロウイルス(Norovirus)が排出され始め、摂取してから25-72時間後には便の中のノロウイルス(Norovirus)の排出はピークに達します。ピークは感染の2-5日後で便1gあたり約1000億個のノロウイルス(Norovirus)の排出が見られますが、その後減少し、感染から平均で4週間まで便から検出されます。
引用:横浜市衛生研究所
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ノロウイルスは感染力が強く、10~100個の少量のウイルスでも感染するといわれています。
つまり潜伏期間中で下痢をまだ発症していなくても、感染者がトイレで排便すれば、ノロウイルスが糞便から排出されてる可能性があります。
そのため、感染者がよく手洗いをしていない場合には、手についたノロウイルスの接触感染により二次感染してしまいます。

あるいは排便後に、手洗いが不十分な状態で料理をした場合にも、食品を通して感染を広げてしまう可能性があります。
また潜伏期間中であっても、排便後にお尻をよく洗わないで浴槽に入った場合には、湯船の湯の温度ではノロウイルスは失活化(不活化)しませんので、その後に湯船の湯に浸かった人は、湯の中のノロウイルスが手に付着して、それが口から入り込み感染してしまう可能性があります。
ノロウイルスは非常に小さな粒子で、インフルエンザウイルスの1/3程度の大きさなので、手のシワにより深く入り込むので、丁寧に洗わないと除去できません。
いずれにしてもノロウイルス発症後に比べると、潜伏期間にうつる可能性は低くなりますが、症状が出ていなくても感染力はありますので注意が必要です。
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ノロウイルスは非常に小さいので、手のシワに深く入り込みます。
ノロウイルスよりもずっと大きな大腸菌で実験したところ、手荒れのない若い人の手は、菌が取れやすかったのですが、中高年の方の手や手荒れのある方の手は、菌が付着しやすく、なかなか取れにくいという結果が出ました。

若い人の細胞はピチピチしていて、すき間がありませんが、中高年の方の手や手荒れのある手は、細胞が萎縮してしまい、すき間だらけになっています。そのすき間にノロウイルスがたくさん入り込みます。
ノロウイルスは、大腸菌よりも非常に小さいので、手のシワに入り込む数も膨大な数になります。そのため、ノロウイルス対策には2度の手洗いが有効と同時に手を荒れさせないことも大切です。
それでは次に、潜伏期間以外で、ノロウイルスの症状が出ていなくても他の人にうつる可能性のある場合について見ていきましょう。
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ノロウイルスは不顕性感染や症状消失後もうつる!

ノロウイルスは、感染していても表面的には症状が出ない場合もあり、これを不顕性感染といいます。不顕性感染の場合にも、他にうつす感染力はあります。
ノロウイルスの不顕性感染は意外と多く、報告によっても幅はありますが、30~50%は不顕性感染がいると考えられています。
また軽い風邪のような症状だけで終わることもありますが、この場合にも他の人に、二次感染を引き起こす感染力があります。
自覚症状がなくても、家族(特に乳幼児、高齢者)や職場の同僚が、嘔吐・下痢症状を起こしているときには、ご自身も感染している可能性がありますので、食品取扱者の場合には特に注意が必要です。
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また、吐き気、嘔吐、下痢、腹痛の症状は、通常は1~3日で治まりますが、症状消失後も糞便からウイルスの排出は続きますので感染力はそのまま保持しています。
一般的には、症状消失後1~2週間はウイルスの排出が続き、中には1ヶ月以上経過しても糞便からウイルスが検出される場合もあります。特に乳幼児の場合はウイルス排出が長く続く傾向があります。
乳幼児(小学校入学前の子供)は、成人よりも10倍~100倍のウイルス量を排出します。

2014年1月、静岡県内の小学校で1271人が集団感染して感染性胃腸炎を発症する食中毒事件が起きましたが、その原因は食パンに付着していたノロウイルスであることが判明しました。
そこで食パン製造所の従業員の便を調べたところ、従業員23人のうち4人からノロウイルスが検出されましたが、いずれも体調不良は訴えておらず、不顕性感染か感染後に回復した後のウイルス排出期間に、食パンにウイルスが伝播したものと考えられています。
このように症状があらわれていなくても気付かないうちに他の多くの人達に二次感染させてしまうところが、ノロウイルスの怖さでもあります。
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お尻を洗浄した後でも石けんで手を洗わないといけない理由
シャワレット付きのトイレはお尻の清潔を保つのに役立ちますが、シャワレットで綺麗にしても、乾燥させる前にトイレットペーパーで拭くと、濡れたペーパーを通して手にウイルスがつきます。
たとえばシャワレット抜きで、糞便がトイレットペーパーにつく場合でも、下痢の時には水分が多いのでトイレットペーパーをかなりの枚数重ねてもノロウイルスは手につきます。
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そのため、シャワレットを使用しても、しなくても、排便の後は、必ず丁寧に手を石けんで洗うことが大切です。石けん自体にはノロウイルスを失活化する効果はありませんが、手の脂肪などを落とすことによってウイルスを落としやすくする効果があります。

またシャワレットの水勢が強すぎると、ウイルスが便器に広がることもあるので注意が必要です。

ノロウイルスは、カキなどの二枚貝やウイルスに汚染された食品の摂取による食中毒よりも、糞便や嘔吐物からの二次感染の数のほうが圧倒的に多くなります。
潜伏期間中や不顕性感染、あるいは回復した後の症状消失後も、他の人へうつす感染力がありますので、下痢・嘔吐などの症状のない時でも、普段から丁寧な手洗いや食品を中心部までしっかり加熱することを心がけるようにしましょう。
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参考書籍
- ノロウイルス現場対策 その感染症と食中毒 丸山務 監修
- ササっとわかる感染症 岡部信彦著
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