アスペルガー症候群とADHDの違い!特徴の徹底比較
アスペルガー症候群とADHDは、共に発達障害の仲間です。脳の機能不全が原因で起こる発達障害は、それぞれ重なり合う部分も多く、複数の障害が重なって現れることも少なくありません。
発達障害とは
発達の遅れという意味ではなく、脳の認知機能のかたよりのために社会不適応を起こす状態をいいます。自閉症スペクトラム(自閉症・高機能自閉症・アスペルガー症候群など)、ADHD(注意欠陥多動性障害)、LD(学習障害)などが発達障害に含まれます。
アスペルガー症候群とADHDは、両方を併発している場合もあり、また幼児期・学童期・思春期などの成長段階や生活環境によっても、現われてくる症状が違ってくるため、症状からアスペルガー症候群かADHDかを区別することは難しいとも言われます。
そのため、子供のときにADHDと診断された人が、成長してからアスペルガー症候群(自閉症スペクトラム障害)と診断し直されることや、その逆のケースもあります。
今回は、一見似て見えるアスペルガー症候群とADHDの違いについて、まとめてみました。
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アスペルガー症候群とADHDの違い

アスペルガー症候群とADHDとは、中核となる症状は異なりますが、表面に現れる症状は同じように見える場合があります。しかし、なぜそのような行動になるのかという原因が異なるため、対処の仕方も違ってきます。
アスペルガー症候群とADHDとの違いは、アスペルガー症候群を「察することの障害」とするならば、ADHDは「我慢することの障害」と言えるでしょう。
アスペルガー症候群の子供は、我慢することはできますが、察することが苦手なのに対して、ADHDの子供は、我慢することはできなくても、察することはできます。
では、アスペルガー症候群とADHDの違いを、より具体的に理解するために、それぞれの特徴について簡単に見ておきましょう。
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アスペルガー症候群とADHDの特徴
アスペルガー症候群とADHDの基本的な特徴を、まとめてみました。
◆アスペルガー症候群の特徴
アスペルガー症候群などの自閉症スペクトラムには、次のような3つ組の特性があります。

- 社会性の障害(対人関係を作るのが難しい)
- コミュニケーションの障害(会話が成立しにくい)
- 想像力の障害(強いこだわり・変化を嫌う)
アスペルガー症候群の特徴
- 相手の気持ちやその場の状況を察することが苦手
- 予定外のことに対応したり、予測したりすることが困難
- 好きなことには熱中するが、それ以外のことは目に入らないため一般的な常識や知識を身につけていないことも多い
- 同時に2つ以上のことをするのが苦手
- 感覚が、極端に過敏な人と鈍感な人がいる
◆ADHDの特徴

ADHD(注意欠陥多動性障害)は、不注意、多動性、衝動性の3つを中心症状とします。これらの症状は、その人の意志力の弱さや我がままな性格から生じるものではなく、脳の実行機能の障害によるものと考えられています。
学童期においては、ADHDの子供は、1クラスに1~2人はいると見られており決して珍しい障害ではありません。
ADHDの多動性・衝動性は、ある程度の年齢になると自分でコントロールできるようになりますが、不注意は成人期まで持ち越す傾向があります。
ADHDの特徴
【不注意】
【多動性】
【衝動性】
- 忘れ物や紛失物が多い
- 不注意なミスを繰り返す
- 気が散りやすく、物事に集中できない

【多動性】
- 落ち着きがなく、じっと座っていられない
- 常に手足を動かしている
- しゃべりすぎる
【衝動性】
- 順番を待てない
- カッとしやすくケンカになりやすい
- 欲しいと思ったものは人の物でも、すぐに手が出る
アスペルガー症候群とADHDの特徴を簡単に見てきましたが、それでは、アスペルガー症候群とADHDには、具体的にどのような違いがあるのかを、次に一緒に見ていきましょう。
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アスペルガー症候群とADHDの違いを徹底比較
アスペルガー症候群とADHDとの大きな違いは、アスペルガー症候群の人は、他人の気持ちや状況、立場などを読み取ることが苦手ですが、ADHDの人は、人の気持ちを理解したり、相手の立場について考える力はあります。
また、ADHDの人は、同じことを続けるのが苦手なのに対して、アスペルガー症候群の人は、同じことを続けるのは得意ですが、その反面、変化に弱く、新しいことをするのが苦手というように、ADHDとアスペルガー症候群とは、基本となる特徴は異なりますが、表面的には似て見える特徴もあります。
しかし、同じように見える行動でも、原因が違えば、対処の仕方も違ってきます。
では、ADHDの子供に見られる3つの特徴(不注意・多動性・衝動性)の行動について、具体例をあげて、アスペルガー症候群の子供との違いについて見ていきましょう。

ADHDの子供に見られる衝動的な行動は、アスペルガー症候群の子供にも見られることがあります。たとえば、友達と遊んでいて突然かんしゃくを起こすことがあります。
その場合、ADHDの子供は、自分がこうして遊びたいと思った衝動を抑えきれずに友達と衝突しますが、友達がなぜ怒るのか相手の気持ちは理解できます。けれども、あまり考えずに衝動的に行動するためにケンカになります。
それに対してアスペルガー症候群の子供は、友達の気持ちや、その場の状況を読み取ることができずに、自分はこうして遊びたいという気持ちを相手にうまく伝えられなくて、かんしゃくを起こします。
このように、ADHDの子供は、我慢することができなくてトラブルを起こしやすくなりますが、相手の気持ちを察することはできます。
それに対して、アスペルガー症候群の子供は、我慢することはできますが、相手の気持ちを察することができなくて、友達とトラブルになってしまいます。

アスペルガー症候群の子供は、相手の気持ちを理解しづらく、他の人が自分とは違う考え方をするかもしれないということ自体分かっていないことも多くあります。
また朝礼などで列に並んでいるとき、動き回ってしまったり座ってしまう行動は、ADHDの子供にもアスペルガー症候群の子供にも見られます。(多動性)
ADHDの子供は、動き回っていけないことは分かっていますが、じっとしていられなくて動き回るのに対して、アスペルガー症候群の子供は、列に並んで大人しく話を聞いていなければいけないことが、よく理解できていません。
アスペルガー症候群の子供は、過去に経験したことを上手く活用できないため、こういう場合にはこうするといったように、その場の状況に合わせて行動を上手く調整できません。そのため指示された情報を十分に理解していないこともよくあります。
話がいつまで続くか分からずに、先の見通しが立たないので、不安になり、そわそわ動き回ってしまいます。このような時には、朝礼は○時○分に終わるので、それまで動き回らずに先生の話を静かに聞くというルールを具体的に分かりやすく教えます。

また授業中に先生の指示に従って練習問題をやることに集中できない行動は、ADHDとアスペルガー症候群の両方の子供に見られます。(不注意・集中力の欠如)
ADHDの子供は、1つのことに集中している時間が短く、関心が次々に移り変わっていくため集中できないのに対して、アスペルガー症候群の子供は、先生の指示を十分に理解できず、それを先生や周りの子供に聞くこともできないため、どうしたらいいのか分からずに、ボーっとしたり、手いたずらを始めたりします。
このように、表面上は同じような特徴に見えても、ADHDは、「いけないことと分かっていても我慢できなくてやってしまう」のに対して、アスペルガー症候群は、「我慢はできるけど分からないからやってしまう」という違いがあります。
子供が困った行動をしたとき、その理由を周りが理解できるかどうかと考えてみると、アスペルガー症候群の子供の行動に比べれば、ADHDの子供の行動のほうが、心情は理解しやすいといえます。

アスペルガー症候群とADHDとは、表面に現れる症状が重なる部分も多いため、区別するのが難しい面もあります。特に幼少期は、アスペルガー症候群などの自閉症スペクトラム障害(ASD)とADHDの見分けがつきにくいケースもあります。
さらに、子供の成長や環境によっても、現れてくる症状が違ってくるため、いろいろな医療機関へ相談に行くたびに、診断名が変わることもあります。また知的レベルの高い人では、成人し、社会に出るまで障害に気付かれないケースも稀ではありません。
またアスペルガー症候群とADHDとを併発してる場合もあり、どちらか一方の障害を持っている場合と比べると、本人の生きづらさは、それだけ強くなり、生活上の困難さも増すため、対処の仕方もより難しくなります。
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アスペルガー症候群とADHDの違い
ADHD | アスペルガー症候群 | |
---|---|---|
多 動 | 落ち着かない、せわしない。 | その場の状況やルールを理解していない時に不安になり動き回る。 |
不 注 意 | 気が散りやすい、一つのことに集中する時間が短い。好きなことには没頭することもある。 | ・好きなことには熱中するが、興味のないものには集中できない。 ・感覚過敏のために周りの物や音が気になって集中できない。 ・具体的に分かりやすく指示されないと、自分が何をしたらいいのか理解できずに思い込みで行動してしまうため、不注意な行動に見られる。 ・2つのことを同時にするのが苦手なため集中力がないように見える。 |
衝 動 性 | 待つことができない。 | なぜ待つのか状況を読めないので突然の思いつきで動いているように見えることもある。 |
話 し 方 | おしゃべりだったり早口で自分中心にしゃべることはあるが、会話のやりとりに不自然さはない。 | ・難しい言葉を使ったり大人びたしゃべり方をするケースもある。 ・話し相手を無視した一方的な会話。 ・言葉の意味を字義通りにとらえて、たとえやユーモアが通じない。 |
対 人 関 係 | 周囲の反感を買う行動のためトラブルを起こしやすいが、基本的には対人関係が理解できるので、人と適切な関係を築くことはできる。 | ・悪気はないのに人を傷つけることを言ったり、その場の空気が読めなかったりで、人と適切な関係を築くことが難しい。 ・相手に言われるがままに動いて自分の気持ちをうまく表せないタイプもいる。 |
こ だ わ り | 物事への極端な執着やこだわりはない。 | 興味の幅が狭く深い。興味のあるものには強いこだわりを示す。 |
感 覚 | 極端な感覚の敏感さ・鈍感さが見られることもある。 | 視覚・聴覚・触覚・嗅覚・味覚などに極端な敏感さ・鈍感さがみられる。 |
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ADHDとよく似た症状を現すアスペルガー症候群のタイプ
アスペルガー症候群は、人とのかかわり方の違いによって、大きく3つのタイプ(積極奇異タイプ・受け身タイプ・孤立タイプ)に分けられます。アスペルガー症候群の子供の多くは積極奇異タイプですが、このタイプは、一見ADHDと似ているように見えることが多くあります。
これらの3つのタイプは、それぞれ異なって見えますが、年齢と共に、1つのタイプから別のタイプに変化することもあります。
★ 積極奇異タイプ

人への関心が高く、積極的に他人にかかわりを求めていくタイプだが、かかわり方の質が変わっているため、人とのトラブルを起こしやすい。一見ADHDと思われる様子の子が多い。
★ 受け身タイプ
自分からは積極的にかかわろうとしないが、誘われれば交流する。自分の気持ちを言えず、嫌なことを言われたり、されたりしても、嫌と言えない。大人しいと思われがちで、障害に気づかれにくく対応が遅れがち。
★ 孤立タイプ

他人とかかわることが苦痛で、できればそっとしておいて欲しいと思っている。愛想がなく、人への関心が極端に少ない。友達と遊ぶよりも一人でいることを好む。
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まとめ

アスペルガー症候群には、「社会性の障害、コミュニケーションの障害、想像力の障害」の3つの特性があり、ADHDには、「不注意、多動性、衝動性」の3つの特徴があります。
このように両者は、違う特徴を持つ異なる障害ですが、実際には、アスペルガー症候群とADHDの症状とは、重なる部分も多く見られます。
アスペルガー症候群とADHDとは、一見同じように見える症状でも、ADHDの場合は、自分の衝動的な行動が周囲に迷惑をかける、不快な思いをさせるということが理解できています。
それに対してアスペルガー症候群の場合は、相手の考えや状況を読み取るのが苦手なため、相手がどう思っているかということは理解できていません。
同じように見える行動でも、何が原因で起こる行動なのかが違えば、対応の仕方も異なってきます。
ただし、アスペルガー症候群とADHDとは、両方を併存している場合もあり、また年齢によって目立つ行動の特徴が違ってくることもあります。
そのため、ADHDと診断された子供が、成長するにつれて対人関係の悩みが強く出るようになると、アスペルガー症候群と診断名が変わるということも、しばしば起こります。

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参考書籍
- ADHDとアスペルガー症候群 のび太・ジャイアン症候群3 司馬理英子著
- 大人の発達障害アスペルガー症候群・ADHDシーン別解決ブック 司馬理英子著
- 図解よくわかるアスペルガー症候群 広瀬宏之著
- 図解よくわかるADHD 榊原洋一著
- 大丈夫!ADHDのすべてがわかる本 榊原洋一著
- はじめに読むADHDの本 榊原洋一著
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