ADHDの大人の特徴 成人に急増する発達障害とは
あなたは、こんな事で困っていませんか?
- どんなに注意していても忘れ物やうっかりミスが多い。
- 約束が守れない。遅刻してしまう。
- 面倒なことはついつい先延ばしにする。
- 物事の優先順位がうまくつけられない。
- 片付けが下手で部屋がごちゃごちゃ。
- せっかちで、キレやすい。
- 人の話を最後まできちんと聞けない。
このような症状に小さい時からずっと困ってきたとしたら、それは性格ではなくADHDが原因かもしれません。
今回は、大人に急増しているADHDの特徴についてまとめてみました。
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大人のADHDの特徴

近年、ADHD(注意欠陥多動性障害)と診断される大人が急増しています。ADHDの患者数は予想以上に多く、日本には300万人以上の患者がいると推定されています。
ADHDは、かつては子どもに特有の行動特徴だと思われていました。しかし、ADHDの子どもの追跡調査によって、実際には、症状が改善されないまま大人になったり、大人になってからADHDの症状に気づいて悩んでる人たちが多いことが分かってきました。
ADHDには、不注意、多動性、衝動性の3つの基本的な特徴が見られます。大人のADHDの場合には、目に見える形での「多動性」は治まってくることが多く、不注意による行動が目立ちます。
このため、成人型のADHD(attention deficit hyperactivity disorder)を、hyperactivity(多動性)の部分を抜いて、ADD(注意欠陥障害)と表すこともあります。
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ADHDは、普通は小学校に上がる前に症状が現れることが多いですが、症状が軽かったり、周囲への適応力が高かったりすると、大人になるまでADHDに気づかれないこともあります。
しかし、子供の頃に見過ごされてきた症状が、大人になり、会社勤めをしたり結婚生活を送るようになると、周囲から「こんな事もできないのか!」「またミスしたのか!」「片付けられないだらしのない奴!」と非難されるようになります。

周りから、「怠け者」「仕事ができない」とのレッテルを貼られ、本人は悩み苦しむようになります。
このような周囲からのストレスが続くことによって、うつ病や不安障害などの二次障害をひき起こす人が多いことも、大人のADHDの特徴でもあります。
大人のADHDの人の場合、学生時代は成績優秀だった人が多く、そのため周囲からは本人の性格の問題として受け止められることがほとんどです。
それでは、大人のADHDは、具体的にどのような特徴を持つのか、子供のADHDの特徴と比べながら詳しく見ていきましょう。
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◆大人のADHDと子供のADHDは、どう違うの?
精神科医
ADHDは、不注意・多動性・衝動性の現われ方によって、次の3つのタイプに分かれます。
「不注意優勢型」
- 物忘れが多く、気が散りやすく、物事に集中できないといった不注意による特徴が目立つタイプ
- 不注意が目立たず、落ち着きの無さや衝動性が強く見られるタイプ
- 不注意と、多動性・衝動性の両方の症状がみられるタイプ
3つのタイプの中でも、特に女子に多い不注意優勢型の場合は、多動性(落ち着きのなさ)が目立ちません。そのため、周囲に気づかれないまま大人になるケースも少なくありません。
また、他のタイプにおいても、多動性は子供の頃には目立ちますが、大人になるにつれて、だんだん目立たなくなります。その結果、大人のADHDでは、「何となく気ぜわしく、そわそわしている」という印象を与えます。
具体的には、貧乏ゆすりや細かい手の動きを繰り返す、早口で絶え間なく一方的にしゃべるなどの症状として現れます。
それでは、ADHDの3つの基本的特徴(不注意・多動性・衝動性)について、大人と子供の症状をそれぞれ見ていきましょう。
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ADHDの職場における問題点としては、すぐに取り組むべき仕事があるにもかかわらず、周辺にある興味をひくことに関心が向いてしまい、肝心の業務がなかなか進まないことがあります。
このため上司からは、指示をきちんと聞いていない、当てにならないと否定的な評価をされやすくなります。

多くのADHDの人は、本来は人なつっこく対人関係に大きな問題はみられません。しかし、相手の話を十分に理解していなかったり、約束を守れないことなどが繰り返されて、安定した対人関係を維持することが困難になりがちです。
このため、対人関係の悩みから、ひょっとして自分はアスペルガー症候群ではないかと思い、病院を受診する大人のADHDの人も少なくありません。
また、ADHDの大人では、アイコンタクト(視線を合わせること)が苦手なケースもよく見られます。これは外部からの刺激に気を取られやすいため、目の前の相手に集中できず、視線が落ち着かない傾向があるためです。
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女性のADHDの場合は、職場では何とか対応できても、家庭生活が大変というケースも多く、夫婦関係や子育てで支障をきたす場合も少なくありません。
ADHDの女性は、家の中の片付けができなかったり、毎日の炊事が苦手であったり、主婦としての役割が果たせないために、家族から非難されることも多くあります。

さらに、相手の気持ちをよく考えずに、一方的に自分の主張をしてしまったり、イライラして夫に当り散らしてしまい、配偶者との関係が険悪になることもあります。
子育てにおいては、一貫した態度を取りにくく、その時々で衝動的に気まぐれな対応をしがちです。また、子どもの行動が遅いとイライラして、ついつい感情的になって叱りすぎる傾向があります。
その結果、親子関係がどんどん悪くなり「私はダメな母親だ」と子育てに自信を失う人も少なくありません。

ADHDの人は、失敗の多い行動を繰り返す中で、実際は能力があるにもかかわらず、自己不全感が強く、自己評価が低いことが多くみられます。
さらに、大人のADHDは感情面が不安定になりがちで、気分の浮き沈みが激しく、怒りを爆発させたり、イライラ感などを示す場合もあります。
大人のADHDは、人生のさまざまな局面において不安定になりがちで、そのためリスクの高い人生になることも多く、仕事上では転職・休職・失業、家庭においては離婚や別居の率が高くなるといわれています。
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大人のADHDの二次障害

大人のADHDの場合、周囲からの叱責などによるストレスや、自分はダメな人間だという自己否定感と向き合ってきた期間が長く、二次的な障害を抱えてしまう人も数多くいます。
米国における調査では、大人のADHDの二次障害は、次のように報告されています。
- 気分障害(うつ病、躁うつ病など) 38.3%
- 不安障害(パニック障害、社会不安障害など) 47.1%
- 物質使用障害(薬物依存、アルコール依存など) 15.2%
ADHDと分からずに大人になってしまった人の場合は、うつ病や不安障害などの二次障害を引き起こして初めて受診するケースも少なくありません。
しかし、こうした場合、ADHDという診断名になかなかたどり着けない場合も多く、特に「うつ症状」を訴えて精神科や心療内科を受診すると、うつ病と診断されるケースも多くあります。中でも、女性のADHDには、うつ病の合併症が多くみられます。
しかし、うつの症状をひき起こす背景にADHDが隠れていることに気づかないで治療を行なっても根本的な解決にはなりません。
実際、長期間、抗うつ薬で治療を続けても変化が見られなかった人が、ADHDの治療薬によって劇的に改善されるケースもあります。
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「うつ」の後ろに「ADHD」が隠れている!
アンダーソンは、うつの57%にADHDがみられるという驚くべき高い数字を報告しています。バードも48%と報告しており、うつと診断される人の約半数にADHDがあるとしているのです。
ADHDの人は子どものころから、ADHDの行動特性のために、しかられたり、仲間はずれにされたりする経験が多く、逆に成功体験(ほめられる)が少なく、自尊感情が低いことがわかっていますが、この低い自尊感情がうつの発症に関係している可能性があるのです。
日本とアメリカでは、ADHDやうつの罹病率が違うのかもしれませんが、それにしても、アメリカでは、うつのきわめて重要な背景とされるADHDについて、日本ではほとんど取り上げられないのは理解に苦しむところです。
(出典:図解 よくわかる大人のADHD 榊原洋一・高山恵子著)
ADHDの発症頻度

ADHDは、小学校入学前後に発見される場合が多く、ADHDの有病率は、子どもは5~6%、大人は3~4%と推定されます。性別では女性より男性に多く、小児期では、男性は女性の2倍の有病率があると言われていますが、大人になると差が少なくなります。
これは、子どもの場合は、男児に多い多動を主症状とするケースがADHDと診断されているためと考えられ、実際の性差は、あまり大きくないのかもしれません。
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ADHDの家族性・ADHDは遺伝するのか?

ADHDには家族性があるといわれ、ADHDの発症には、遺伝的要因が関与していると考えられています。
海外で報告された研究結果によると…
- 両親ともADHDの場合、その子供がADHDになる確率は20~54%
- 父親がADHDの場合、その子供がADHDになる確率は25~35%
- 母親がADHDの場合、その子供がADHDになる確率は15~20%
- きょうだいがADHDの場合、他のきょうだいもADHDになる確率は25~35%
ADHDの原因は、はっきりと解明されていませんが、脳機能のかたよりのために、独特の行動特性が現れるのではないかと考えられています。
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おわりに

ADHDは、外から分かりにくい「見えない障害」であるために、怠け者や自分勝手な奴と思われがちですが、ADHDは、本人の性格の問題ではなく脳の機能障害が原因で起こる特性です。
ADHDは心の病気ではありませんが、ADHDに気づかずに対応が遅れると、精神的ダメージを受けて、うつ病や不安障害などの心の病気になってしまいます。
子供に見られる障害と思われてきたADHDが、実は大人にも多いと認識されるようになったのは、ここ十数年あまりのことです。そのため自らのADHDの特徴に気づかないまま、社会にうまく適応できずに悩み苦しんでいる大人の人も少なくありません。
大人のADHDの人すべてに医療が必要というわけではなく、症状が軽い場合には、周囲の環境を調整するだけでも日常生活の生きづらさの改善に繋がる場合もあります。
それでも改善されない場合には、専門医に相談し、心理社会的療法や、必要があれば薬物療法などの治療を受けます。

自らも発達障害者である心療内科医、星野仁彦氏は、大人のADHDの克服には、本人や周囲が、ADHDに気付き、それを受け入れることが大切だと指摘しています。
本人の個性や性格の問題として受け止めたままだと、いつまでたっても生きづらさの解決にはつながらず、状況をさらに悪化させてしまいます。
ADHDのある人は、行動力があり興味のあることには集中力を発揮し、他の人が思いつかないような独創性にあふれたアイディアを思いつくことが得意です。
このようなプラスの特徴を活かし、マイナス面をカバーするためには、日常生活で様々な工夫をしていく必要があります。そのためには、まず、自らのADHDに気付き、その特性を知ることから、すべてが始まると星野医師はいいます。

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参考書籍
- 大人のADHD もっとも身近な発達障害 岩波明著
- 発達障害に気づかない大人たち(職場編) 星野仁彦著
- 図解 よくわかる大人のADHD 榊原洋一・高山恵子著
- 大人の発達障害<アスペルガー症候群・ADHD>シーン別解決ブック 司馬理英子著
- よくわかる大人のADHD 司馬理英子著
- 知って良かったアダルトADHD 星野仁彦著
- 図解 よくわかるADHD 榊原洋一著
- 図解 よくわかる大人の発達障害 中山和彦・小野和哉著
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