熊は冬眠期間に目覚めることも!冬眠の時期と穴の場所
数年前、我が家の近くの幼稚園の庭に、熊(ヒグマ)が出没して大変な騒ぎになりました。
以前は、街の中で熊が目撃されることは一度もなかったのですが、ここ数年は、熊が人里で目撃される回数が増えてきました。
私の住んでいる地域では、10月~11月に、熊が目撃されることが多いです。熊が冬眠に備えて皮下脂肪を蓄えるためにエサ探しをしているのでしょう。
熊による人身事故が一番起きやすいのは、冬眠前の時期と人が山菜採りに山に入る5月だそうです。
しかし熊が冬眠に入れば、それで安全ということではありません。実際、先日(平成27年1月26日)も熊の冬眠期間中である1月に、雪深い山林で、森林作業中の男性が熊に襲われ亡くなりました。
熊の冬眠は、浅い眠りなので、周囲の音や振動などで目を覚ますこともあります。また、すべての熊が冬眠するわけではないともいわれます。
熊の被害に遭わないためにも、熊の生態について知っておくことも大事ですよね。そこで今回は、熊の冬眠について取り上げてみました。
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熊の冬眠の時期と冬眠期間

日本には、北海道に生息しているエゾヒグマと、本州・四国に住むニホンツキノワグマの2種類の熊がいます。
熊は食料の少ない冬の間、体温や心拍数、呼吸数、その他の代謝を落とす冬眠により厳しい冬を乗り切ります。
ヤマネやシマリスは、体温を外気と同じくらいまで下げて冬眠しますが、熊の場合、冬眠中の体温を4~5度ほどしか下げないことや、睡眠が浅く覚醒しやすいことから「冬ごもり」とも呼ばれます。
熊を捕獲して麻酔で眠らせ、体を動かした回数を計測する活動量センサーを首輪に取りつけて山に放して調べたところ、熊は冬眠中であっても、朝夕には冬眠穴の中で体を緩慢に動かしているそうです。
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ヒグマの場合、10月~11月にかけて冬ごもり用の穴の準備にとりかかります。そして、根雪になり、気温が日中も0℃以下(真冬日)が続くようになるころ、冬眠に入ります。
ヒグマやツキノワグマの冬眠期間は、12月~4月までのおよそ4ヶ月半ほどです(11月から冬眠する熊もいます)。
冬眠期間は、地域や年によっても変わることがあり、暖冬の年には、冬眠期間は短くなります。暖かい南の地方ほど冬眠期間が短くなり、西日本では1~2か月しか冬眠しない熊もいます。
それに比べて、海外のもっと寒い地域のヒグマは、半年以上冬眠する熊もいます。また、上野動物園(人工的に作られた冬眠環境)の熊の冬眠期間は3か月ほどです。
冬眠開始時期に個体差がある理由
熊の冬眠開始時期は、熊の年齢や性別、繁殖状態によりバラつきが見られます。妊娠してるメスが、冬眠開始時期が一番早く、次に妊娠してないメスで、大人のオス熊が一番冬眠開始が遅くなります。
また、もう一つ冬眠開始時期のばらつきの要因として、エサが豊富にあるかどうかも影響してきます。
各国の研究から、エサの欠乏が起こると、熊の冬眠開始は、より早まることが分かってきました。
ミズナラの堅果などヒグマにとって主要なエサが凶作の年ほど、早めに採食活動を切り上げて冬眠に入ります。
それに対して、豊作の年は栄養状態が良く、寒さに耐えられるので、降雪まで里近くを徘徊し、熊は採食活動をします。
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熊の冬眠する場所はどこ?
熊が冬眠する穴には、樹洞や自然にできた岩のすきま、自分で掘ってつくる土穴があります。ヒグマの場合には、斜面に生えた木の根元を、ほぼ水平に掘り進んで作るタイプの穴が多く観察されています。
また、北海道大学が行ったエゾヒグマの調査によると、北海道の支笏湖周辺地域の冬眠穴のほとんどは、ヒグマが自ら地面に掘った土穴で、樹木の下に掘ることで入り口が崩れないようにしてあること、冬眠穴の多く(63%)が、標高500~800mの上部広葉樹林帯に集中していること、また入り口が冬期間の主風である北西の風の風下に向いた、南~東向きの斜面に多いということです。
しかし、世界遺産の知床半島で調査されたヒグマの27ヶ所の冬眠穴については、標高帯もさまざまで、樹木の根張りのないものもあり、支笏湖周辺の冬眠穴の立地条件とは異なっていたそうです。
つまり、その土地、その場所に応じて、熊が冬眠穴を作る場所は異なっていて規則性はないようです。
ツキノワグマは、夏には標高3700m の高さでも生息し、冬は夏よりは標高の低い場所へ移動しますが、大きな標高差を上り下りする熊もいるので、行動範囲の広い熊がどこに冬眠穴を作るかは特定できません。
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熊の冬眠穴ってどんなの?
実際にヒグマを育てた経験のあるカメラマンの方の話しによると、冬眠の穴の入り口は、大人が入ってやっと入れるぐらいの大きさだそうです。
中は、正座しても天井に頭がつかず、広さも2.5平方メートルほどで、中腰で動き回ることができるぐらいの広さです。穴の中には、笹や野草がしかれ、熊は、ここで4ヶ月半ほど飲まず食わずで浅い眠りを続けます。
雨漏りしたり内部に雪が積もったりしないような所を選び、風向きも考えて穴の位置を選ぶようですから、熊もなかなか頭がいいですよね。
しかし、冬眠穴は天然林ばかりでなく植林地にもあり、山林作業員が冬眠中の熊に襲われる被害もあります。
また、熊の中には、穴に入ることができずに、岩陰のくぼみで、じっとしているものもいます。背中に雪が積もっている状態で冬眠する熊もいるというのですから驚きです。
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冬眠しない熊もいる
「熊は冬眠する」と一般的には思われていますが…◆エサが十分あると熊は冬眠しません!
そのため動物園の熊や、登別温泉の熊牧場では、餌を与えるので熊は冬眠しません。
しかし上野動物園では、自然と同じような環境を人工的に作り、低温の環境とエサを与えることを止めて、ニホンツキノワグマを冬眠させ、その様子をモニターで展示しています。その観察動画から、熊の冬眠についていろいろ分かってきたようです。

熊は、冬眠中は途中で目覚めることはないと考えられていましたが、上野動物園の冬眠中の熊の観察からは、熊は冬眠中も浅い眠りの中で、時々目覚めては自分の寝床を整えたり、ほし草で遊んでいるかのような行動も見られます。
また近年は、野生の熊でも「冬眠しない熊」もいると指摘する声もあるので、熊のいる冬山に入るときには、くれぐれもご注意ください。
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熊は冬眠中に出産
熊は冬眠中の1月終わりころから2月にかけて出産します。生まれる子熊は2頭のことが多く(1頭や3頭の場合も)、ツキノワグマは1年半、ヒグマは1年半~2年半の期間、子育てをします。子熊は生まれたときには目も耳も開いてなく体毛もほとんどなく、体重は450gほどと非常に小さいです。
熊は冬眠期間中は、水や食べ物を一切とらず、トイレもしないといわれてきました。体内から排出されるべき尿は、膀胱壁(ぼうこうへき)から再吸収しタンパク源として再利用するという生理機構が、冬眠中だけ働くのです。

しかし、熊狩りの人々の伝承によると、母熊は子供を生むと、ノドが渇くらしく、冬眠中であっても穴から出て沢の水を飲むといいます。そのため、母熊は沢筋にいることが多いというのです。
また、上野動物園の妊娠中のメスの場合も、冬眠中はしばしば水を飲み、排尿する行動も見られます。
熊の冬眠についてはナゾの部分も多いのですが、上野動物園で熊に人工的に冬眠を起こさせる取り組みは、熊の冬眠のナゾの解明につながるかもしれません。
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冬眠中のはずの熊が1月に出没
今年(2015年)は、熊の冬眠期間であるはずの1月から、熊があちこちで目撃され、道内では熊に襲われる死亡被害まで出ています。熊は冬眠中であっても、雄グマや出産しなかった雌グマの場合は、冬眠を妨害されると、ためらわずに穴から出て攻撃してきます。
しかし、子熊が生まれたばかりの母熊の場合は、寒さに弱い赤ん坊グマを守って穴から出ようとしないことが多いです。ただし、子熊が木に登れるようになる7月、生後5か月齢以上になると、母熊は積極的に反撃してきます。

世界遺産の知床半島では、観光客が多く訪れるため、熊が人慣れし過ぎて、人を恐れなくなってきています。
熊は、基本的に人間が近づくことを嫌がりますが、人間が捨てたゴミなどから人の食べ物の味を覚えると、熊は人を恐れるよりもエサの魅力で近づいてくるようになります。人を恐れなくなった熊は、とても怖いです。
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私たち人間が、熊との関わり方でどのようなことを気をつければいいのかを分かりやすく説明してくれてる動画です。↓
★人間とヒグマとの共存のために私たちが気をつけること
熊対策については、「熊対策は鈴・ラジオのグッズだけでは危険!対処法を知る事が大事」をご参考になさってください。
熊の冬眠については、まだまだナゾの部分も多いですが、熊は冬眠中にそれほど体温が低下しないので、途中で覚醒しやすいという特徴があります。
音や振動で熊は目を覚ますこともありますので、熊の冬眠穴の存在に気付かずに近づきすぎた場合には、熊は襲ってくることもあります。子連れの母熊は、子どもを守るために必死なので特に危険です。
冬山に入られる場合には、熊の被害に遭わないように、くれぐれもご注意くださいね。
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